2018年現在、日本人の3〜7%が生涯に一度はうつ病と診断されるといわれています。うつ病などの心の病は自覚症状がなかったり、病院に行かずに一人で我慢しているケースもあるため、もしかするともっと多くの人が鬱症状に苦しんでいるかもしれません。しかしうつ病だからといって幸せな人生を諦める必要はありません。今回はうつ病と診断されている人向けに、結婚生活で気を付けるべきことを5つ解説します。
うつ病は女性に多い?うつ病患者数と男女別の割合
うつ病とは「精神的ストレスや身体ストレスが重なるなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態(※1)」のことを指します。 ある調査によると、日本では1年間でうつ病と診断される人の割合は人口のおよそ1〜2%、一生に一度うつ病と診断される人の割合は3〜7%と言われています。日本人は真面目すぎるとよく言われていますが、実は諸外国のデータと比較すると、日本の方がうつ病患者の割合の方がわずかに低い数値を示しています。
また外国では若い人や女性にうつ病患者が多いとされていますが、日本ではうつ病に関する男女差はほとんどないという結果もあります。一方で日本では中高年のうつ病患者が多く、中高年ニートや大人の引きこもりが社会的問題となっています。
※1参照元:厚生労働省 知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス総合サイト
うつ病の分かりやすい症状は?主な症状まとめ
うつ病の症状は大きく分けて以下の3つに区分されます。
①自分で感じる症状:憂うつ、気分が重い・沈む、悲しい、不安、小さなことが気になる、物事を悪く考える、死にたくなる、集中力が続かない、悪いことをした気分になる、自分を責めるなど
②周囲から見てわかる症状:表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着きがない、イライラしている、急に落ち込む、飲酒量が極端に増えたなど
③体に出る症状:食欲がなくなる、体がだるい、疲れやすい、便秘がち、動悸息切れ、眩暈、過呼吸、頭痛、肩こり、性欲がなくなる、口が渇くなど
これらはうつ病の表的な症状例ですが、人によって症状の出方や苦しみのレベルは異なります。うつ病も早期発見し正しい治療を受けることで、強い薬に頼る必要がなくなったり、比較的短期間で症状緩和が期待できます。少しでもおかしいと感じたら、一人で抱え込まずに精神科や心療クリニックなどに受診するとよいでしょう。
引用元:厚生労働省 知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス総合サイト
うつ病にはどんな治療法があるの?治療の考え方と主な治療法
うつ病治療の考え方には3つの柱があるといわれています。
①うつ病に影響がある体の病気や内服している薬があれば、その治療や薬剤を変更または中止する
②うつ病に関係する体の病気や内服薬がなければ、抗うつ薬療法(SSRI:セロトニン再取り込み阻害薬)を行う
③環境のストレスが多いようなら調整する
これらの治療に対する考え方を基本に、その本人のうつ病のタイプや性格などをして主治医と話し合いながら治療を進めていくことになります。巷にはうつ症状を緩和する民間療法もたくさんありますが、自分に合っていない治療法により返って症状が悪化してしまうことも考えられます。まずは信頼できる専門医と相談することが肝心です。
引用元:厚生労働省 知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス総合サイト
うつ病でも結婚できる?結婚によって生じるストレスについて
うつ病を患っていても、比較的症状が軽かったり、投薬治療や休養によって自分である程度コントロールできるようなら、勿論結婚をすることだって可能でしょう。しかし結婚するということは、新たな生活がスタートするということです。急激な環境の変化によって新たなストレスを抱える可能性も捨てきれません。また今まで何の問題もなかった人が、子どもを妊娠・出産した後に、妊婦鬱や育児ノイローゼを発症するケースもあります。
現時点でうつ病治療を行っている人が結婚する場合は、まず結婚相手に病状をよく相談することや、自分の体や精神的な問題について周りからの理解を得ることが必須でしょう。またできるだけ環境変化によるストレスを受けないように、住まいを整えたり、将来の育児について具体的に話し合うことも必要です。
うつ病でも結婚はできる!結婚生活で気をつけるべき5つのこと
結婚相手に自身の鬱症状について理解を得ることは勿論ですが、その他にも結婚生活で気を付けるべきことはたくさんあります。新たな生活でどんなことに気をつけていけばいいのか、結婚生活で気を付けるべきポイントを5つご紹介します。
その1 結婚後もうつ病の治療を続けること
うつ病は風邪のように薬を飲めば完治するものではありません。医学用語ではうつ病の症状が落ち着き治療の必要がない場合でも「完治」ではなく「寛解」という言葉が用いられます。一時的に症状が良くなったように見えても再発する可能性はゼロではないという概念から、このような言葉が使われているのです。
結婚後に一時的にうつ症状が軽くなったからといって勝手に内服や通院をやめてしまうと、突然の再発にパニックを起こしてしまうかもしれません。うつ病とは長いスパンで付き合っていく必要がある病気であることを心に留め、焦らずにじっくりと治療を続けていくことが大切です。
その2 夫や家族から理解や協力を得ること
結婚後まわりに迷惑をかけたくないからといって、うつ病であることを一人で抱えこまないようにしましょう。 自分自身はどのようなうつ症状が見られるのか、具体的にその状態を生活に最も影響がある夫や家族に伝え、必要なときには体を休める必要があること、家事や仕事の負担を軽減する必要があることも理解してもらいましょう。
結婚は人生においてとても大きなライフイベントですが、その分余計にストレスもかかり、元々の症状に影響を及ぼす可能性もあります。 ストレスが蓄積しないように、不調のときには遠慮せず周囲に伝えられるような環境を整えることが大切です。
その3 夫や家族以外にも相談できるサポーターをもつこと
うつ病のあなたを支える夫や家族にも少なからず負担はかかることは仕方がありません。しかし、夫や家族の負担を軽減する工夫は必要です。
その工夫の一つとして、夫や家族以外にに相談できるサポーターを確保するとよいでしょう。 主治医や地域の行政機関、患者グループや友人など、自分の症状を隠さずに話せる存在がいることで、自分にも家族にとっても気持ちが楽になります。
また自分と同じ病気になっている人がどのような思いを抱き対処しているのかを知る厚生労働省のサイトなどもあります。そこから同じ病気の人の体験談を参考にすることもできます。
その4 妊娠の希望があれば早めにかかりつけ医に相談を
もし妊娠の希望があれば、早めに主治医に相談をしましょう。なぜなら、ときに内服している薬によっては妊娠前に軽減したり薬剤を調整する必要があるためです。 もちろん、薬の調整は体調や主治医の判断によりますが、夫婦として子どもを持つのか持たないのか結婚をする前から話し合っておくとよいでしょう。
また妊娠や育児時期は女性にとって最もストレスかかりうつ病が悪化する可能性も高くなります。ですので、妊娠や育児に夫婦で対処できるのか、またうつ症状によっては子供を持たない人生もあることなども含めて考える必要もあるでしょう。
その5 自分の心や体を大切にする
最後に、うつ病であっても、結婚する時に気をつけるべきこととして、結婚前以上に自分の心や体をより大切にする努力を続けることが挙げられます。
上述のように、結婚は人生の一大イベントです。大きな環境の変化でストレスをより感じやすい時期でもあります。そのような人生のライフサイクルに今いるんだということを忘れずに、心や体の不調を感じたら周囲に早めに伝えて、ときには思い切って休息する余裕を持つことも必要です。
結婚したからといって、これまで以上に頑張る必要はありません。心がまた折れてしまう前に、周囲にヘルプを求められるようにしておきましょう。
周囲の協力を得ながら、頑張りすぎないことが肝心
うつ病を抱えていても幸せな結婚はできます。しかしきちんと治療を続けること、周囲の理解やサポートをうまく利用することが不可欠となります。自分ひとりで辛さを抱え込んだり、無理してよき妻を演じようとすると、幸せなはずの結婚生活が、返ってあなたを苦しませてしまうかもしれません。
何よりも大切なことは、あなた自身が本来の能力以上に頑張り過ぎないことです。うつ病に完治はありません。ひょんなきっかけからうつ症状が再発する場合もあります。適宜主治医への相談を忘れずに、適切なアドバイスを受け、幸せな結婚生活を歩むことが必要といえるでしょう。